いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「沙優が心配しているお泊まりに必要なものだけど、コスメに関してはこれを使って」
そう言って、ピンク色の箱の蓋を持ち上げると、現れたのはメイクアップコフレセットだ。
「わ、明倫堂のだ!」
「うちで評判のいいものを選んできたんだ。全部プレゼントするから使って」
「いいの?」
目を丸くすると、いち君はもちろんだよと頷く。
「強引にここまで連れてきたし、お詫びだよ」
「ありがとう」
なんて素敵なの、とテンションが上がるも、ここまで来た経緯を思い出すと微妙な心境になる私は心が狭いのだろうか。
いや、でも本当に振り回されていたしなぁと遠い目になりかけたところで、彼はもう一つの白い箱を開けた。
「着替えの服はこっち」
「可愛い!」
いち君が当ててみてと勧めてくれたのは、シフォンのマキシ丈ワンピだ。
白一色でまさにサマーワンピースといったそれを立ち上がって当てれば、丈もちょうどいい。
「これもプレゼントだから」
そう言われて私は慌てて首を振った。
「こっちまで悪いよ! ちゃんとお金払うから」
「大丈夫。沙優はもらえる権利があるから」
にっこりと微笑むいち君は箱を片付けにベッドルームに消えていく。
貰える権利。
それは、いち君の彼女だから、だろうか。
だとしたら、私はそんな付き合い方は望んでいない。
彼から貢いでもらう為に付き合ったんじゃないのだ。
だけど、私が何か意見をする前に、とりあえず足りないものを買いに行こうかと、ショップの並ぶエリアに移動することになった。