いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


ああ、そうか。

彼は私の為にこのスイートを予約し、ヘリまでチャーターしてくれたのか。

服やプレゼントまで用意して、祝おうとしてくれていた。

多分、私がバスルームで倒れてしまったからいち君の描いていた予定とは違ってしまったのだろう。

だけど、それでも。


「ありがとう、いち君。嬉しい」


一番に祝いたいという彼の想いに、私は胸が苦しくなる。

だって、彼がいなくなる前は毎年祝ってくれいたのだ。

一番に祝いたいからと、朝、プレゼントを持って家まで迎えに来て『おめでとう』と言ってくれていた。

それを明日、私はまた聞くことができる。

嬉しくて、苦しい。

苦しくなるほどに、私は──


「私、いち君のことが好きだよ」


また、あなたに恋をした。

言葉と共に、彼の背中に腕を回して抱きつく。

初めて、私から想いを告げて。

初めて、私から彼の温もりを求めた。

その途端、とうに捨てたはずの痛みが蘇る。

しまいこんでいた、忘れた振りをしていた痛みを、今癒せと言うように。

だから私はまた声にする。


──本当はきっと、ずっと、あなたを好きだったと。


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