いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


もしかして。


『家に父が押しかけてきて勝手なこと言い始めたから、追い出してすぐ沙優に連絡したんだ』


あの日、いきなり会いたいと私の家に来たのはそれが理由だったのかもしれない。

できることはないかと聞いた時、結婚と答えたのも頷ける。

気づけなかった上に流してしまった。

なんてひどいことをしたのだろう。

その時のいち君の気持ちを想像すると、胸がずきりと痛んだ。

でも、彼はその縁談を受けるつもりはないのだ。

だとしたら、私の取るべき行動はひとつ。


「一円もいりません」

「別れないということかな?」


そう。

私は別れるつもりはない。

でも、もしもいち君が自分で悩み、自分の意思で縁談を受けるというのなら……

私は、苦しくても、彼の手を離そうと思う。

彼を縛るものに、私はなりたくはないから。


「彼の人生の歩み方は彼が決めることだと思います。彼がその"いいお話"を受けると判断したのなら、私は何も言いません」


彼の人生は彼のもの。

だから、もうひとつだけ少しの勇気を振り絞り言わせてもらう。


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