いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「すみません、突然。外で待たせてもらうつもりだったんですけど」
「いえいえ。夜とはいえ外は暑いでしょう。それで、真山に用でしたかな?」
「ええ」
頷いたいち君が、私を見つけると微笑んだ。
私は若干小走りで二人の元に向かうと、顔をニヤつかせている社長に「すみません、ちょっと……」と濁しつつ愛想笑いを浮かべ、いち君の腕を引き端っこへと移動した。
「ど、どうしたの?」
声を潜めて尋ねると、彼も合わせて話してくれる。
「今日は早く終わりそうだって言ってたから迎えに来たんだ」
「ごめんね。あと少しかかりそうなの」
遅くてもあと三十分と伝えると、彼は腕を持ち上げて時間を確認した。
「じゃあ、隣りのカフェで待っててもいいかな?」
「うん、早めに終わらせるから」
なんなら月曜は少し早めに出勤しようかなんて思いながら宣言した私に、いち君は身長差を縮めるように腰を折ると、まるで内緒話しをするように耳元に唇を寄せる。
「いいよ、ゆっくりでも。明日は土曜だし、昼まで寝てようか」
「い、いち君!」
人の勤務先で彼はまたしても私の心臓を壊しにかかった。
顔を真っ赤にした私の姿を見て、彼は満足そうに笑う。
そして、社長に向き直ると「それでは、私は失礼します」と一礼し、オフィスのみんなにも頭を下げて事務所を出た。