いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


──意識が霞がかかる。


『まだ発売まで日はあるけど、完成品だよ』


そう言って、私がデザインしたパッケージに包まれる口紅を優しい手つきで唇に塗ってくれたのはもう何十分前だったか。

わからない。

いち君の優しい香りが染み込んだダブルベットのシーツを掴んでいた手を、彼の背に回す。

きっと、もうとっくに口紅も薄れてしまっているだろう。

繰り返される彼の甘く噛みつくような激しい口づけによって。

いち君の望むままに愛されていく私の体が、与えられる熱を傍受し翻弄され、膨れ上がって弾ける。


「沙優……」


熱に浮かされた声で名前を呼ばれ、私は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。

飛んでた意識が徐々に引き戻されて、気づけばまた柔らかい彼の唇が私の唇を塞ぐ。

可愛い。愛してる。

何度も囁かれ、満たされた私の頭はまだぼんやりしているけど──


「結婚、してくれる?」


その問いに、捻って返す程度の意識はあった。

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