いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


太陽の光を受けてキラキラと輝く海を眺めながら、デザートのお手製ゼリーも美味しくいただいて。

お礼にもならないけど、近くのコーヒーショップで買ったアイスコーヒーを堪能している私たち。

最初はぎこちなかった空気も、今は和らいでいる。

なんとなく始めた会話の内容は互いの仕事の話。

いち君はお父さんの会社を継ぐために頑張っているのだと今しがた語ってくれたところだ。

ただ、その表情に楽しさや輝きはなく、それが少し気になった。

色々と大変なんだろうなと、勝手に心配していると、いち君が表情を明るくする。


「そういえば、沙優の会社はデザイン事務所だよね」

「そうだよ」


まだ呼び捨てに慣れなくて、どことなく落ち着かないままコクンと頷いた。

するとなぜか、彼は思案するように水色の空へと視線を投げて。


「そう、か」


口元に弓を引く。


「何、何で笑顔なの」


何か良からぬことを考えているのではと勘繰り尋ねるも、いち君はちらりと私に視線を寄越し、笑みを深めただけで。


「うん。ちょっとね。楽しみにしてて」


素直に楽しみにできそうにない反応を返された。

とりあえず、何が起こっても驚かないように心の準備だけはしておこう。

氷が溶けて少し薄くなったアイスコーヒーを飲みながら、そうひっそりと決めたのだった。











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