いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「あれ、沙優ちゃんお疲れ様。今日は早いね」

「お疲れ様です。今日はクライアントさんの会社から直帰だったので」

「そうなんだね」


良かったじゃないと微笑む仁美さんの後ろで、チエミちゃんがペコリと頭を下げる。

私もお辞儀をすれば、感の鋭いチエミちゃんが「沙優さん、元気ない」と可愛らしい声で指摘した。


「なになに、どうしたの?」


心配そうに私の顔を覗き込む仁美さん。

オフの時の彼女はあまりメイクを塗り込んでいないのだけど、元がいいのでスッピンで出歩いても問題のないレベルの美人さんだ。

そして、彼女の娘である中一のチエミちゃんも彼女に似て美人。

そんな美人親子を前に、私は溜め息を零す。


「二人とも美人でいいなぁと思いまして」


無理矢理あははと笑ってそう告げると、仁美さんも声に出して笑った。


「ありがと。沙優ちゃんは可愛い寄りだわね」

「か、可愛い!?」


驚く私に、チエミちゃんも頷いて肯定する。

いち君が時々可愛いと言ってくれてるけれど、リップサービスだと思っていた。

……待ってよ。

人を疑うのは良くないってわかってるけど、もししたら仁美さんもリップサービスで言っているのかもしれない。

自信のなさが顔に出ていたのだろう。

仁美さんはクスクス笑うと言った。


「貴女は可愛いわよ。その心もね」


貴女は貴女らしく。

今の私が好きだと笑顔で告げられ、落ち込んでいた気持ちが少しずつ上向いていく。

そうだ。

私は私らしくいよう。

仁美さんの言葉を心に沁み込ませ、私は玄関の扉を開けた。

一度きりの人生、下ばかり向いていてはもったいないと、顔を上げて。
















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