恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 「杏奈?」

 「あ、修平さん!お帰りなさいっ!!」

 修平さんが帰宅したことに全然気付かなかった私は、リビングのドアを開けて入って来た彼にびっくりした。
 いつもだったら、アンジュの反応で帰宅に気付いて、一緒に玄関まで彼を迎えに行っているのに。
 リビングの時計を見ると、針は六時半前を指している。

 「ただいま。ぼうっとしてたみたいだけど、どうかした?料理で忙しかったの?」

 「ううん。えぇっと、忙しくは無いけど、ちょっと手順とか考えてただけだよ。」

 「そっか。じゃあ、着替えてくるね。夕飯よろしく。」

 ニコニコしながら私の頭をサラッと撫でた修平さんは自分の部屋へと戻って行く。その彼の後姿を見つめながら、私の頬は熱くなり、心臓が忙しなく動くのを感じていた。


 「おぉ!!すごいご馳走だ!!」

 着替えを済ませて戻ってきた修平さんはダイニングテーブルの料理を見て瞳を輝かせてた。綺麗な顔をした大人の男性が少年みたいに大きな口を開けて歯を見せて全開の笑顔を見せている。
 その顔を見れただけで、私は朝から買い出しや調理に頑張ったことが報われたような気持ちになった。

 彼が笑っていてくれるだけで、私は嬉しい。
 彼が辛そうにしていると、私は哀しい。
 彼に触れられると、ドキドキするけど少し苦しくなる。

 私に分かっているのはそれだけ。
 自分の事なのに分からないことだらけだけど、今はとにかく彼を笑顔に出来るように頑張ることが私の『恩返し』の一つなんだと思うことにする。

 
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