恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
俺の腕の中の杏奈を見下ろすと、すやすやと寝息をたてている。
彼女は、俺と出会ったのは『自転車パンク』の時だと思っているに違いない。
でも本当はそうじゃなかった。心地よさそうな彼女の寝顔を見ながら、一年前のちょうど今頃のことを思い返した。
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「桜、もう散ってしまったな…」
休日の夕暮れ時、アンジュといつもの河川敷をのんびりと歩いていた。
アンジュとの暮らしも、もう少しで2年になる。
ちょうど一年前、桜の花が散り終えるのを見届けた祖母が他界した。
彼女は桜の花が何より好きな人だった。
いつだったか、桜の花を眺めながらうっとりと
「願わくは 花の下にて 春死なむ…ああ、素敵ねえ。」
と彼女が言うから、俺は本気で焦った。
「縁起でもないこと言わないで欲しいよ。」
そう俺がぼやくと、「ふふふ、修平のお嫁さんを見るまでは死なないわよ。」と目を細めて笑うから、「じゃあ、しばらくは大丈夫か。」と言い返してやった。
「まあ!」と呆れた声を出した祖母と顔を見合わせて笑いあったことを昨日のことのように覚えている。
穏やかで優しくて、ちょっと悪戯好きな面もある祖母のことが幼少の頃から大好きで、俺は暇を見つけてはこの家に遊びに来ていた。
父母のいる実家は少し遠くで、祖母とは別々に住んでいたのだけど一人で暮らす祖母がずっと気がかりだった。
大学卒業後、市内で伯父のやっている会社を手伝うことになったのを機に、一緒に住むことにした。
祖母と一緒に住み始めてからは、仕事をしながら家をバリアフリーに改装したり、とにかく忙しい日々だった。