恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 緩い坂道をゆっくりと上りはじめてから十数分経った頃、修平さんが「ここだよ」と立ち止まった。
 家の前から続く道から、少し脇に逸れて細い道を入ったそこにあったのは、墓地だった。
 大分上まで歩いて来たから、もうここは山の入口。緑に囲まれた中にあるそこは、拓けた場所にあり、手入れがきちんとされていて雑草もない。

 「ここは俺のご先祖様たちの墓地なんだ。」

 そう言った修平さんは、いくつかある墓石の中で、いちばん手前のお墓に歩み寄って行く。そしてお墓の前にしゃがみ込んで、持っていた紙袋から中身を取り出す。それはお線香とライターだった。

 彼が何を始めるのか気付いた私は、彼の横に並んでしゃがんでから、風がお線香の火を消すのを防ごうとそこに手を添える。二人で小さな火を守るように見つめた。
 火が付いた所で、私は手に持っていた花束を墓前に備えた。
 
 そうか、だから修平さんはお庭のお花を準備したんだ…。

 墓前に手を合わせている彼の後姿を、少し下がったところで見ながら、彼が朝食前にしたかったことを理解した。
 なんとなく、お墓参りをしている彼をじっと見つめているのが悪いような気がして、私は改めて周りを見渡した。

 高台にあるこの墓地からは、目の前を遮るものがなく瀧沢邸が良く見えた。今は葉だけになってしまっている庭の桜の樹もよく見える。それだけでなく、河川敷までもよく見渡せた。

 遠くに少しだけ見える茶色い建物は図書館かな…

 高台の思わぬ展望に、興奮してキョロキョロしていると、いつの間にかお参りを済ませた修平さんが私の横に立っていた。

 
< 155 / 283 >

この作品をシェア

pagetop