恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 「私みたいな子じゃ、修平さんには合わない、と思うの…」

 俯いたまま彼と目を合わせずに言う。

 「私は地味だし、綺麗じゃないし、スタイルだって良くないし…」

 言いながら脳裏を『葵さん』の姿がよぎる。

 「それにおっちょこちょいだし、仕事も全然出来なくて…葵さんみたいな女性なら」

 「ちょっと待って。」

 私の言葉を遮った修平さんの声が硬い。少し怒っているようなその声に、私は俯いたまま、目線だけを上げた。
 
 「なんでそこで葵の名前がでるの?」

 「……」

 「確かに葵は仕事が良く出来るし、見た目も悪くない。」

 彼の口からはっきりとそう断言されて、分かってはいたけど少し凹む。

 「でも、俺が好きなのは杏奈だよ。葵じゃない。彼女はただの同僚だよ。」

 さらにキッパリと言い切った彼の言葉に、思わず顔を上げた。真剣な彼の瞳とぶつかる。

 「いくら自分の事だからって、俺の好きな子のことを悪く言って欲しくない。」

 ドキンと大きく心臓が跳ねて、鼓動が早くなる。

 「杏奈はいつも十分すぎるくらい可愛いし、確かに少しおっちょこちょいなところもあるけど、それだから見ていて飽きないし、ちょこまか動く姿は可愛すぎるくらいだ。仕事のことは俺は良く分からないけど、まだ二年目だからこれから色々覚えていけばいいよ。何より杏奈はいつも楽しそうに仕事をしているから、利用者としては質問しやすくていいと思う。」

 一気にそう捲し立てられて、私は目を丸くする。
 そんな私を見て、「は~~~っ」と大きく溜め息をついた修平さんは、少しの間目をつむって黙っている。それからおもむろに目を開けて私を見つめて口を開いた。

 「俺のことはゆっくり考えてくれたらいいかな、と思っていたけど、計画変更する。」

 それからあまり見たことのない意地悪そうな微笑みを浮かべて

 「覚悟してね、杏奈。」

 と言った。


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