恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 「おかえりなさい。」 

 夕飯の時間に帰宅した修平さんを出迎える。少し口を尖らせて出迎えの挨拶をする私を見て、彼は不思議そうに首を傾げる。

 「どうしたの、杏奈。なんか怒ってる?」

 「怒っては、ない、けど…」

 「けど?」

 「私、次に出勤するのが怖いよ…」

 「なんで?」

 「なんでって!修平さんが皆の前であんなことするから!」

 頬を膨らませて抗議すると、彼は「あはは。」と笑う。

 「別に、聞かれたら本当のことを言えばいいんじゃないかな?」

 「本当のこと、って!そんなこと言えないよ…」

 「どうして?俺と噂されるのは嫌?」

 「そうじゃなくてっ!……」

 なんて説明していいか分からなくなって、私はとうとう言葉を詰まらせた。
 黙って俯いてしまった私の顔を、修平さんが覗き込んでくる。

 「言って、杏奈。杏奈が不安に思ってることは何でも教えて欲しいよ。」

 髪を撫でながら優しく言われて、私はおずおずと言葉を選んで話し始めた。
 
< 171 / 283 >

この作品をシェア

pagetop