恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 太陽が西に傾きかけた頃、修平さんは私を目的地まで車で送っていくと言って聞かなかった。

 「疲れてるから、今日は家でゆっくりしていて。」

 と何度も説得したのだけど、「杏奈といる方が癒されるから」と、彼は頑として譲らなかった。
 そうして、私は彼の車で約束の場所まで送ってもらうことになった。


 「予定より、早く着いたけど大丈夫?」

 着いたその場所は、この辺では知る人ぞ知る割烹料理店。ここのお料理を父も母も気に入っていて、もう何度か来たことがあった。

 「うん、大丈夫。多分いつもみたいに個室だと思うから早めに入って待ってるよ。」

 「そっか。今日は実家に泊まるんだよね?」

 「うん。そのつもりで両親にも言ってあるから。」

 残念そうに少し眉を下げて覗き込まれる。まるで尻尾を下げて、「おいていかないで」と言う仔犬みたいなその仕草に、私の心臓はきゅんきゅんと音を立てる。

 そっと手を伸ばして、彼の頭を撫でた。

 「明日は、なるべく早く帰るね……」

 なでなで、と手を動かすと、彼の目が大きく開いた。そして、私のその手をすかさず掴む。
 掴んだ私の手を、自分の頭から下した彼は、私の掌に唇を寄せた。
 もう何度も私に触れたその唇が、掌のくぼみをなぞるように動き、ペロリと舌で舐めた。

 「しゅ、修平さんっ!」

 ここは車の中とはいえ、公衆の面前だ。まったく人通りのない場所じゃない。焦った私は、掴まれた腕を自分の方に引き寄せた。

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