恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 上演の三十分前に目的地に着いた私たちは、招待券にかかれている座席番号を探して会場に入った。
 上演が近付いたそこは、既に来場者の熱気に包まれている。私たちと同じように、この映画を楽しみに来ている人がこんなに沢山いるんだと思うと嬉しくなってテンションが上がってくる。

 「杏奈、席、ここで間違いない?」

 前を歩く修平さんが立ち止まったのは最前列のすぐ後ろ、二列目だ。映画を見るには最適とは言えないけれど、舞台挨拶を見るならきっと一番良い席。しかも最前列は誰もわざと空けておいてるようで、実質二列目が一番前となっている。

 「おおいっ、杏、修平くん、ココだ!」

 呼ばれてそちらを向くと、父の姿があった。二列目の中央寄りの席で私たちに手を振っている。

 「ヒロ君。もう来てたの?」

 「杏たちが中々来ないからハラハラしてたぞ。」

 「私がお仕事だったから、修平さんが車で連れてきてくれなかったら間に合わなかったよ。」

 「隆弘さん、先日はご馳走さまでした。」

 それぞれに挨拶をしながら、父の隣に私、修平さん、の順に腰を下ろす。

 「あれ、そう言えば由香梨さんは?お席もないようですが、お仕事で来られないのですか?」

 「「え?」」

 父と私の声が重なる。
 私の心臓がドキン、と波打つ。

 「えっと、修平さん…」

 口を開いた私の隣の父が、私たちの方を向いて、目を丸くする。

 「杏、もしかして修平くんに言ってないのか?由香梨さんが、」

 「待って、ヒロ君。ちゃんと私が、」

 慌てて父の言葉を遮った時、会場内に大きなブザーの音が鳴り響いた。

< 261 / 283 >

この作品をシェア

pagetop