恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 

 それから私は涙を拭って、荷物を鞄に詰めて、管理人室へ行き、来た道を来る時と同じように自転車で帰った。

 管理人さん夫婦と、お互いの心配をしたり、今後の話を聞いたりした。
 ……したはずなんだけれど、それが画面の向こうの出来事のようで、ハッキリと覚えていない。
 今、手にしている鞄も重たくて、何かが沢山入っているみたいだけど、何を詰めたのか全くと言っていいほど覚えていない。

 
 そして今、瀧沢家の大きな門をくぐった瞬間、軽い眩暈を覚えてギュッと目をつぶった。
 
 なんで私、ここにいるの?
 
 森の中で迷子になったみたいな、
 霧の中で身動きが取れなくなっているような、
 そんな心細くて途方に暮れたような気持ちに、叫びだしたくなる。

 アプローチの真ん中でじっと立ち止まっていたその時、

 「ワンワンッ」

 黒っぽいものが駆け寄って来た。
 
 「アンジュ……」

 アンジュが私の手に鼻を擦り付けてくる。
 
 「あたたかい…」

 アンジュの柔らかい体に触れると、私の体に血の気が戻ってくる。
 
 しゃがんでアンジュの首に腕を回した。

 「ただいま、アンジュ。」

 私の頬に頭を擦り付けてくるアンジュを数回撫でて、立ち上がった。

 「お迎えありがとう。ちょっと元気出たよ。」

 アンジュと並んで玄関までのアプローチをゆっくりと進んだ。
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