恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 自転車を元の場所に止めて玄関の扉を開ける。
 アンジュの足を軽く拭いて、一緒にリビングへと向かった。

 「あれ、いない…。」

 瀧沢さんに「戻りました」と挨拶しようと思っていたけど、彼はリビングには居なかった。
 自室にいるのかな、と思ったが、なんとなくどっと疲れが出て、私も借りている客間に戻ることにした。

 客間のドアを閉めて持っていた荷物を降ろす。
 気持ちが随分重くなったのは、大半が濡れているこの荷物のせいでかもしれない。

 少しふらつきながらベッドへうつ伏せに体を投げ出した。

 手足が鉛のように重い…
 気持ちも体も、底のない沼に沈んで行くようだった。


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 頬を何かが触れたのがくすぐったくて、首をすくめた。
 深い水の中にいるのに、頬に触れる感触で、少しずつ意識が浮上していく。
 遠くで低い声がする。

 「…ながら寝ちゃたんだ………そうに…」
 「せっかく…るから…すこし……しておこうか」

 低くて、柔らかい声。
 私の知っている男性よりも少し高めの、あなたはだあれ。

 ゆっくりと重い瞼を押しあげた。



 
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