恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 私はなんと3時間近くも眠っていたのだった。

 「す、すみません!!すぐにお昼ご飯を準備します!!」

 慌てて彼の腕の中から抜け出て、ベッドから立ち上がろうとした私を、瀧沢さんはそっと制した。

 「お昼の準備はいいから。」

 「あっ、もうこんな時間だから召し上がりましたよね…すみません、私全然お役に立ててなくて…」

 しょんぼりと肩を下げた。
 
 すると瀧沢さんはその肩に手を置いて、私を覗き込むようにして視線を合わせてから口を開いて

 「お昼は俺もまだ。部屋に籠って仕事をしてると、よく食事を飛ばすこともあるしね。今日は部屋で本を読んでたんだ。気付いたら2時過ぎてたから、アンジュはどうしてるかな、と思って探しに来たら君の部屋の前に居るのを見つけたっていうわけ。君も立て続けに色んなことがあって大変なんだから、同居初日に無理しない方がいいよ。ちょっと早いけど昼兼夜になるようにデリバリーのピザを頼んどいたから届いたら一緒に食べよう。」

 立て板に水のごとくスラスラとそこまで喋った瀧沢さんは「それと、」と言った後、

 一拍間を置いて

 「俺との約束、もう忘れちゃった、杏奈?」

 そう言いながら、上目使いで首を傾げながら私を覗き込んで、口の端をキュッと上げて笑った。

 彼の色気を近距離で浴びてしまった私は、ビクっと肩を揺らして彼から距離を取ろうと後ろに仰け反った。
 でもその勢いのせいで、仰け反るだけで体が止まらず、ボスっと背中からベッドに沈む。 

 つま先から頭のてっぺんまでが一瞬でカーッと熱くなる。
 心臓がドキドキとせわしなく動いて、頭の奥でその音が鳴り響く。
 真っ赤になった顔を隠したくて両手で覆った。
 その私の手首を追いかけるように瀧沢さんが掴む。

 彼は私の両手をベッドに縫い付けるように押さえて、上から見下ろして来た。

 思っても見ない彼の行動に驚きすぎて、私の心の中は大絶叫を上げているのに、口はギュッと引き結んだまま開けることも出来ない。
 ただ爆発しそうなくらいのスピードで動く心臓と、真っ赤になった顔で彼を見上げているだけ。

 「俺のこと、何て呼ぶんだっけ?さぁ言って、杏奈。」

 小首をかしげる様が可愛い、だなんてこんな状況でもそう思わせてしまう彼がちょっと恨めしい。

 「~~~~!!」

 目を思いっきりギュッとつぶって、鼻から息を吸い込んだ。
 そして大きな声で

 「のいてください!修平さんっ!!!」

 と叫んだ。
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