恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 彼は満足そうにニッコリと微笑んだ後、私の手を解放した。

 ホッと安堵の息を吐いて起き上がろうとしたその時、私を離したばかりの大きな手が、私の頬に添えられた。

 「え?」と思って顔を上げると、さっきまでは楽しそうに笑っていたそ彼が、そのキリッとした眉を少し下げて心配そうに私を見下ろしている。
 私の頬に手を添えたままの親指で彼は私の目元を拭った。

 「目、赤くなってる。冷やさないとね。」

 彼の瞳に映る自分を見つめながら声が出せない。
 
 彼の優しい声に、甘さを含んだその声色に、どうしようもなく心が揺さぶられる。

 胸がきゅうっと締め付けられて、涙があふれてきそうになった。
 涙をこぼさないようにまばたきを堪える。

 「……杏奈」

 ゆっくりと近付いてくるその瞳から目を逸らすことが出来ない。

 耐え切れずキュッと目を閉じた瞬間、ポロリとこぼれそうになった滴を、彼の唇がそっとすくい取った。

 その時「ピンポーン」と呼び鈴がリビングの方から聞こえた。
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