溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 ソファに戻ってきた彼は、私にもコーヒーを淹れてくれた。
 湯気とともに漂う香ばしい匂いは、私に深呼吸を促した。


「俺は、咲以外の誰かと一緒に暮らすなんて考えられないんだよ」

 彼は、まるで愛おしいものを見るように私を瞳に映す。


「だけど咲は、俺の女関係が荒れてるって話を耳にしたんだろ?」
「……だったら、どうだって言うんですか? 実際、八神さんのしていることは酷いと思います」
「そりゃ、この歳になれば異性の友達くらいはいる。でも、簡単に一線は越えたりしない」

 でも、彼の言動はいつだって軽薄で、調子がよくて。
 挙句の果てに、腹が立ったからって私を見合いに駆り出すようなことまでして……。


「一体誰が吹聴したのか知らないけど、妬みで悪評が出回って、こっちだって迷惑してるんだ」

 深く息を漏らした彼は、コーヒーをひと口含んだ。


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