溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「……参ったな」

 なんとなく冷たい声色が隣から返されて、私は車窓を眺める余裕もなく俯いた。


「ご、ごめんなさい! 今のは私が言いすぎました」
「えっ!? どうして咲が謝るの?」
「八神さんなりに、色々考えてくれているのは分かるんです……」

 だけど、きっとすぐに解消されるこの関係に、彼が誠意を見せようとしてくれるのが不思議でならなくて。


「なので、八神さんが怒るのも当然で……っ!?」


 赤信号でブレーキを踏んだ彼は、小さくため息をついた。

 そして、おもむろに私の顎先に指が掛けられ、俯いていた顔が引き上げられる。
 私の瞳に映ったのは、眉尻を下げて、心なしかしゅんとしている彼だった。


< 142 / 210 >

この作品をシェア

pagetop