溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
滑るように走り出した車は、地下から坂を上って外に出た。
ウインカーを出して、周辺の確認をする彼の横顔から、目が離せない。
「あの……この車って、他の女性も乗せたりするんですよね?」
「咲が初めてだよ。もう一台は必要に応じてそういうこともあったけど、これからは咲しか乗せない」
彼の声色は、真剣で誠実だ。
だけど、簡単に信用はできなくて、運転している彼に問いかけるような眼差しを向けた。
「現実的に考えて、相手から連絡が入ったら無視はできない。だけど、俺から会ったりすることもないし、ふたりきりで出かけるようなこともしない」
「……八神さんの気が済んで、関係が解消されるまでの間のために、そこまでしてくれなくてもいいですよ」
そう言ってから、すぐに深く後悔した。
彼の言動は理解しかねることが多々あるけれど、彼なりに信用を得るために考えているはずで……。