溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 夕方になり、今日は早く休もうと社用車の窓から外を眺める。
 赤信号で停まっていると、折り畳み傘を差している女性の姿に目が留まった。


 ――あれ? あの子、たぶん電車で見かける子だな。

 傘でちゃんと見えないけれど、時折のぞく横顔には見覚えがある。
 背丈も小さいし、服装も変わらず目立たない。なんなら差している傘まで淡いベージュに黒のラインで、徹底した地味ぶりだ。

 あれで下着は真っ赤だったりしたら、エロくて惹かれるけどなぁ。


「社長、お立ち寄りになられる場所はございませんね?」
「あぁ、まっすぐ帰るよ」

 仕事から解放されたからか、あり得ない想像をしてしまった自分を戒める。

 欲求不満なのか仕事の疲れなのか分からないけど、今日は早く休もう。
 素性の知らない地味な女の裸を想像するなんて、どうかしてる。

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