溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「それで、この豪雨の中、なにかご用ですか?」
「……お渡しした連絡先も、あの夜の出来事も忘れてください。私、八神さんに遊ばれたなんて思いたくないんです!」
忘れられなかったのに、なかったことにしなくちゃいけないなんて。
彼女は思っていた以上に俺をひどく惑わせる。
そして、この二日の間に俺の悪評を耳にしたのだろうと察した。
「そんなことをわざわざ言うために、私を引き留めたのですか?」
「酔っ払いに絡まれ続けるのと、私に助けられてあの部屋で過ごすのと、どっちがよかったとお思いですか?」
冷たい物言いをしてしまうのは、悔しいからだ。
噂に振り回された彼女は、もうあの夜のような瞳ではない気がした。
純粋で、戸惑っていて、だけどどこか夢見心地で……。
俺をただの男として見てくれていた彼女は、いないと感じた。
癪だから、振ってあげるよ。
そして、思う存分、俺の記憶を残してくれたらいい。
次に会う時は、ただじゃ済まないから覚えておけよ。
いつか必ず、俺に惚れてもらうから。


