溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 ――再会は、予想以上に容易かった。

 突然の雨で新宿の街を行く人々が小走りに駆けていく。
 近くのコンビニや地下鉄の入口など、雨を避ける場所に困らない街は少しだけ人が減ったように見えた。

 その中を、番傘を差して歩く。
 濡れる足元と絽の着物に気を配って、早くタクシーをつかまえようと思っていた。


「待ってください!」

 有給休暇でのんびりとすごしていた夕方、突然呼び止められて振り返る。


 番傘を少し上げて見つめた背後には、雨に濡れて俺を見つめる三藤 咲がいた。


「あのっ、八神さんですよね?」
「……そうですが」
「っ!!」
「なにかご用ですか?」
「私、先日の花火大会の時に助けていただいた……」
「あぁ、Stationiaの」
「はい! 三藤 咲です」

 彼女が俺を覚えていてくれたことは嬉しい。
 だけど、まさかの再会に驚いて、つい素っ気ない態度を取ってしまった。

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