溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「書いてもらえますか? あなたの連絡先」
「わ、私の連絡先ですか!? なぜでしょう……」
八神さんが私と連絡を取り合おうとする意図が分からず、きょとんとする。
「理由がなくてはいけませんか? こうして知り合ったら、連絡先を交換することは往々にしてあることです」
「そうですよね、あはは」
どんな答えを待っていたのかと、私は自嘲めいた微笑みを口元に浮かべる。
これからも長く続く関係になるのかもしれないとか、彼が私をもう少し知りたいと言ってくれたその意味を、勝手に深読みしてしまったなんて。
「ありがとう。今度連絡させてもらいます。食事でもしましょう」
「っ、はい! 是非!」
メモに携帯の番号とメッセージアプリのIDを残したら、彼がそう言ってくれて救われた。
彼との時間が今夜だけじゃないんだって、期待させてもらえるだけでも嬉しい。