溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「あの……私、そろそろ帰りますね。ここまで気を使っていただいただけで、十分お気持ちは伝わりましたし」
彼は紳士的で優しい人だから、もう一度帰宅すると話せば理解してくれるだろう。
俯きがちながらも、時折彼と目を合わせる。
自然と上目遣いになってしまうけれど、真正面から彼と視線を合わせて話せるほど、強心臓ではない。
こうして隣にいるだけで、ドキドキして今にも胸の奥から壊れてしまいそうだ。
「うーん……そこまで言うならと思ったんですけどね。やっぱり泊まっていってください」
「いえ、でもそれじゃお邪魔してしまうので」
「あんな出来事があったからとはいえ、もう少しあなたのことが知りたいんです」
「っ!!」
予期せぬ彼の甘い言葉に、喉元が上下する。
静々と顔を上げたら、彼の妖艶さはそのままに、私を優しく見つめる瞳があった。