執着系上司の初恋
優しさ 前半
視点またもや混在します。

忠犬宮本視点

「加藤さんの歓迎会兼2課忘年会を企画したいと思います!」
先日の朝のミーティングで、ワクワクしながら言った。

「取引先からニューオープンの割引券もらったんです。取引先の人、プレオープン行ったらしいんですけど、ご飯超美味しかったって言ってたんで、みんなで行きましょーよ!」
と皆んなを説得してやって来ました!恵比寿まで!

俺がなんで嬉しそうかってわかる?
俺の課長が加藤さんにベタ惚れだから、ちょっと二人の距離を縮めてあげようと思って!
俺ってなんて上司思いなんだろう♪
取引先の人からもらった割引券のお店は、かなりおしゃれで女子ウケするメニューらしい。肉が食べたい俺としては少し物足りなさそうな予感がするが、まあ今回は諦める。
だから、今日の昼飯は会社近くのカフェの『俺仕様大きなロコモコ』を食べたから大丈夫だ。一度お姉さんの好意で偶然食べた大きなロコモコにハマり、優しいお姉さんに特別に作ってもらってるのだ。毎日でも食べたい味、そして綺麗なお姉さんの笑顔の癒し、あのカフェは俺の心と身体のオアシスだ。
あっ、話逸れちゃった。
「すごく雰囲気のあるお店ですね~。」
ビルのエレベーターを降り、店の入り口の扉まで白い砂利の上に飛び石が5、6個並んでいた。そんな和風の入り口の通路脇に置いてあるオレンジ色のライトの灯篭を見つつ、佐々木さんと一緒に嬉しそうに店に入るのは、加藤さん。つかみはオッケーのようだ。最初は、歓迎会なんていいですー。なんて言ってたから焦ったけど、今日の主役だからね、楽しんで欲しいな。そして、課長にちょっと優しく微笑んでくれたら俺的には満足だ。
障子に仕切られた個室に皆を案内する。準備のいい俺は予約席を下見済み。
「加藤さんは一番奥ね。主役だし、出入り口は俺が座るから。」もっともらしいことを言い、加藤さんを座らせ、向かいの奥に山城さん、佐々木さんを案内し、加藤さんの隣に俺の冴木課長、手前に谷口さんを案内する。せっかくの機会に加藤さんと課長の席が遠いなんて凡ミスをしたりしないのだよ、俺は。
くく、冴木課長嬉しそう。よしよし、作戦はいまのところ順調のようだ。

冴木課長視点
一口サイズに綺麗に盛り付けられた刺身や、なんか飾ってある豆腐、花の蕾が枝ごと飾られた焼き物なんかもやっぱり小さめにカットされ、重箱のような四角い箱の中の10センチ角の仕切りにお行儀よく飾られている。
。。。宮本、お前はいつから女子になったんだ。男からすると、ちまちました料理達は逆に食いにくい。まあ、綺麗だけどな。綺麗だねって男は食わねえだろ。そう思っていると、
「すごい綺麗!食べるのがもったいないです!」彼女が悶えていた。
かわいい、すごく。
「そうだな。食べちゃいたいぐらいかわいいな。」本音をこぼす。
隣から、「けっ!」と冷気がきたが気にしない。
魔女にはワインがお似合いだ。ゆっくり飲んでてくれ。

たわいもない話で盛り上ったころ、忠犬宮本がタブーな話を持ち込んだ。
「加藤さん、どうして転職したんですか?」
「っ。。そうですね。仕事が多忙で体調を崩してしまって。。。」彼女が気まづそうに答える。
宮本、お前ってやつは後で説教だな。
転職してくる者は、キャリアアップの者もいるが、大半は人間関係の問題で転職してくる。挨拶程度に軽く聞くにとどめるのが大人のマナーだと俺は思う。

「さっき言ってたコンシェルジュサービスって、プレゼントとかも対応してくれるんですかね?」

強引に話をそらしたのは山城。やっぱり、お前はできるやつだな。よくやったと笑みを向ける。
「大丈夫です。結構、お孫さんに、とか両親にとかのご相談があるんですよ。」
にこやかに彼女が答えた。良かった。
しかし、彼女に相談してたやつがいたかもしれないと思うと、なんとなく嫌な気分だ。。

そうして、最後のデザート。これは、いい。俺、甘党だから。これまた小さいケーキやタルト、シュークリームが所狭しと皿の上に飾られている。手づかみで口の中に次から次へと放り込む。甘いのも、甘酸っぱいのもうまいなって彼女を見ると、小さなイチゴのタルトを見つめ、ため息をついた。
食べたいけど、お腹がいっぱいってことだろうな。俺は全然足りないんだけど。
「それ、食べないの?」聞くと、
「もうお腹がいっぱいで。」困ったように笑いながら、食べますか?なんて聞いてくる。
ほんとに食べたいのはそれじゃないけど、、なんて思いつつ酔いに任せて(ほんとは大して酔ってないけど)

あーんと口を開けてみる。
彼女は固まった。
彼女は周りの奴らの視線を確認した。
彼女の顔はじわじわ赤くなって、「え、でも。フォークで?いやいやいや。。」
こちらの皿に載せようと小さなイチゴタルトを持った手を手首ごと口元に引っ張り上げ、彼女の指ごと美味しくいただく。舌に彼女の指を感じ、つい、べろりと舐めあげてしまう。
「!!」
彼女の驚愕の眼差し。なんだか癖になりそうだ。

宴もたけなわに終わりを迎え、俺は大満足で駅に向かう。
皆、とりあえずは山手線に向かうようだ。改札が近づくと、
「華っ!華だろ!」
「まじかよ。ほんとに華だ!」
はな、はな叫ぶ酔っ払いの男達がいた。
そこに久しぶりーなんて親しそうに近づく彼女。
はなって、彼女の事?おい、馴れ馴れしいなお前ら。どこのモンだ?
つい視線が厳しくなる。
話を聞いていると前の職場の同期のようだ。同期は名前呼びなのかよ。羨ましい。
知り合いとはいえ、酔っ払いに囲まれる彼女が心配で見つめていると、
「いやー綺麗になったね。色々心配したけど、結婚しなくて良かったじゃん!」
酔っ払いが、大きな声で叫ぶと、周りの仲間達が、おい!ばか!なんて言ったやつをどついてる。

「結婚?」隣にいた宮本がつぶやく。
そう、確かに結婚しなくて良かったって聞こえた。
彼女の顔は見えないが、何も言わずに固まってる。

俺は、瞬間的に飛び出し、彼女を後ろから包み込むように抱きしめて、
「もう一軒、付き合ってくれるだろ?」甘い笑みで耳元に囁く。
そして、酔っ払い達には、殺しそうな視線で「帰れ!」と訴える。

酔っ払い達は急いで帰り、振り返ると宮本達もいなかった。
きっと、気を使ってくれたんだろう。
彼女はびっくりして、また赤くなっているが、ちょっと話を聞かせてもらおうか。俺の行きつけで。
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