そのなみだに、ふれさせて。



……どこで見たんだっけ?

なんていうわたしの疑問に答えてくれたのは、あけみ先輩ではなく、紫逢先輩の方だった。



「これ、スガちゃんのピアスじゃん。

なに、わざわざ改造してブローチにしたの?」



あ、そうだ。菅原先輩のピアスだ。

花のピアスなんて男性なのにめずらしいな、と思った記憶がある。だけど指先サイズのピアスをブローチに改造したことよりも、気になることがあって。



「片方、もらったのよ。

スガ先輩、器用だから改造してくれたの」



「……片方ってなにそのカップルみたいな」



「カップルだけど?」



あけみ先輩の一言で、確信に変わった。

……菅原先輩と、付き合うことにしたんだ。




「え、まじ?

スガちゃんがあけみのこと好きなのは知ってたけど、いつの間にそんな展開に……」



……え、そうなの?

菅原先輩ってあけみ先輩のこと好きだったの!?



じゃあ、菅原先輩が好きなあけみ先輩は紫逢先輩を好きで、紫逢先輩はわたしを好きでいてくれて、わたしは会長を好きっていう一方通行になってたってこと……?

っていうか、それなら菅原先輩と紫逢先輩があけみ先輩を取り合ってるって噂は、あながち間違いでもないような……



「好きな子のことで、いつまでもグズグズしてる誰かさんを好きでいるのに疲れただけよ。

……弱ってる時に優しくされたら、もういいやってなっちゃうでしょ」



「誰かさんって……ん?」



なにかに気づいたように、紫逢先輩が視線を上げる。

二色の双眸に捉えられた彼女は遠慮なく「クソ鈍感」と暴言を吐いて、そんなあけみ先輩を、紫逢先輩は瞬きして見つめたあと。



「……、もしかして、俺?」



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