そのなみだに、ふれさせて。
「なんとなく、よ。
瑠璃は優しすぎるから、泣きたいときほど笑ってみせるから。……ただ、そう思っただけ」
「……わたし、そんなにやさしくないよ」
南々ちゃんとふたりで真剣な話をするときは、いつも悲しくて寂しい。
それはきっと、南々ちゃんにはたやすく本心を暴かれてしまうことを知っているからで。
「あら、気づいてないの?
瑠璃はいつだって、誰かのために頑張ってるじゃない」
「………」
わたしはただ、怖いだけなの。
捨てられた自分自身がどれくらい傷ついたのかは、自分がよくわかってる。
だから、ほかのひとには傷ついてほしくないって。
そう思っていたら、いつの間にか、何が正解なのもわからなくなってしまった。
「でもわたし、わがままだよ」
「どこが、わがままなの?」
「……あのね、」
蒸らした紅茶が、カップに注がれる。
亜麻色の水面が揺らぐのを見つめながら、わたしは「中学生の時、ちーくんと付き合ってたの」と、自分の話をはじめた。
「付き合ってたけど……
恋愛感情で、誰かを好きになれなくて」
南々ちゃんにこんな話をする日がくるなんて思わなかったし、気恥ずかしいけど。
彼女は穏やかに、わたしの話を聞いてくれる。
「だけど王学に入って、その、なんていうか、恋愛感情で好きな人ができて……
ちーくんとは、4月に、別れたの」