Miseria ~幸せな悲劇~

「はぁ、はぁ、赤羽、てめぇ!女のすることか!!」


男はボタボタと垂れる鼻血をおさえながら立ち上がった。


「おまえ、たしか中学の時によく祐希に絡んできた関口だな。懲りずにまた私にぶっ殺されにきたのか?」


美花は関口と呼ばれる男の首もとをつかんだ。


もともと祐希は気弱ではっきりとしない性格であったために、容姿目当てで言い寄る男は多かった。


特にこの関口という男は中学時代、祐希を無理矢理にでも彼女にしたかったらしく、何度も美花に半殺しにされていた。


「クソ、もう手加減しねぇ、女だろうが殺してやる!」


関口は拳を握りしめて美花を睨んだ。


彼の恋路にとって美花はまさに天敵であり、憎むべき障害である。


「へぇ、私とヤろうってのね」


美花はそれを聞いて怯むどころか不敵に微笑んだ。


「上等だ、挿れてみろよ、このインポ野郎」


美花は右腕を大きく振りかざした。


美花はメイと違い乱暴な性向を持っている。


そのため、メイが暴力を極力避けるのとは対照的に、美花は手加減をせず、相手を傷つけてしまうこともままあった。


「ちょっと、美花ってば……」


殺伐とした雰囲気に祐希は涙目になりながら二人の仲裁に入った。


美花が他人を傷つけるほど激昂しているとき、それは決まって祐希が絡んでいる時であった。


祐希はその度に心を痛めてきたが、今回もまた、例外ではない。


「美花……!」


祐希の目からして、このときの美花はいつもよりさらに苛立ちを覚えているようだった。


二人の醸し出すピリピリとした雰囲気は、極限まで空気をいれた風船に針をかざすかのように、現場にいた者達に緊張をあたえた。


まさに一触即発である。
< 14 / 394 >

この作品をシェア

pagetop