Miseria ~幸せな悲劇~
葬儀場の近くにある花園の中をメイは風花について歩いていた。
風花は事故についてメイに語った。そして、ようやく、メイは美花が抱えていた本当の不幸を知ることになる。
「植物状態……風花が……?」
メイは信じられないといった様子で風花に言った。事故について美花からは一言も聞いていなかった。
「はい。交通事故で傷を負って。最近までずっと眠ったままでした……」
風花は立ち止まってメイの方を振り返った。彼女の手には赤い花が握られていた。
「暗い水の中に私は一人ぼっちで沈んでいました。音も光もなくて……私、すごく怖かった。だけどお姉ちゃんは、そんな私の手をいつも握ってくれていた…」
風花はうつむきながら言った。姉を思い、温かい気持ちが込み上げてくる一方で、顔は深い悲しみの色を浮かべていた。
そうか、美花はあのとき、風花のもとに向かっていたんだ……
赤い空の下で美花と語り合った場面がメイの頭にフラッシュバックした。
あのときから、いや、もしかするともっと前から、
美花はたった一人で、残酷な運命と戦っていたんだ。
そう思うと、メイは張り裂けそうなくらい胸が痛んだ。
「私、たしかに聞こえたんです。お姉ちゃんの声が。まだ私に、生きてほしいって……私と、離れたくないって……」
風花の瞳から一筋の涙が流れた。同時に、垂れ下がった風花の手から赤い花がこぼれ落ちた。花は風に吹かれて、花びらが千切れ宙を舞った。