Miseria ~幸せな悲劇~

「はぁ、はぁ、はぁ……」


息を切らせながメイは祐希の家にたどり着いた。


家の回りにはすでにたくさんの人が集まっていた。その奥に黄色い規制線をはる警察官の姿が見えた。


「おい、聞いたかよ? ここの家の主人」


「ああ、まったく、同情するよな……」


メイは人波を掻き分けながら、なんとか規制線ギリギリまで近づいてきた。


「あっ……!」


家の中から婦警に付き添われた祐希が姿を現した。青ざめた顔で制服のスカートを握っている。


「祐希っ……!?」


メイはそんな祐希に声をかけた。祐希は声に反応してメイの方を見る。


メイの登場が意外だったのか、祐希は顔色を変えて目を見開いた。が、直後に一瞬だけその特徴的な潤んだ黒目を細め、ニヤリとメイに微笑みかけた。
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