Miseria ~幸せな悲劇~

手にしていたはずのナイフがなかった。


『やっと、見つけたわ。神崎メイ…』


『だ、誰…!!』


私が振り向くと、そこには部屋の隅に一人の少女が佇んでいた。


『あなた、それ…?』


少女の手には、先程まで私が手にしていたナイフがあった。


『………』


少女は何も言わずにナイフを床に落とすと、ゆっくりと私のベッドに近づいてきた。


『私の名前は喰イ喰イ。あなた達からはなぜかそう呼ばれてるわ』


『喰イ喰イ……?』


黒髪に、見とれるほど美しい青色の瞳。


そして死人のように白い肌と、ぼんやりとしたその表情は、一目で彼女が普通の人間ではないことが分かった。


彼女の名前を聞いたことはあった。


けど、それってただの都市伝説じゃ………?


『ねぇ、あなた?』


『は、はい……』


なぜか私は喰イ喰イの前ではいつもの発作が起きなかった。


彼女が普通の人間ではないからだろうか。


『私と、お話ししない…? 私、あなたのことが知りたいの…』


『えっ………』


それが私と喰イ喰イの初めて出会いだった。
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