Miseria ~幸せな悲劇~

そんな大野の言葉に、祐希は震えた声で食いかかった。


「そんな言い方………!!先輩にとって美花は仲間だったんじゃないんですか…!」


怒りと悔しさからか、祐希は今にも泣き出しそうだった。大野はそんな祐希を見て、怯むどころか、むしろ、面白い物を見るような顔で苦笑した。


メイは大野が拳をグーで握る動作が目に入った。もし祐希がとびついてこようなら、古典的な先輩面で、容赦なく祐希を殴るつもりなのだろうか。


「祐希、もう止そう。用はすんだんだから、帰ろ……」


メイは祐希の肩に触れて祐希を制止した。これ以上、争ったところで何も得にならないと判断したのだ。


祐希は手で顔を覆い隠したまま、メイの手を握った。


「ふん、腰抜けが…」


大野は祐希にむかって言ったのだろうか。彼女はまるで逃げ帰る敗者を蔑むような目で三人を見ていた。


詩依はよほど大野のことが気にくわなかったのか、サッカー部員達が見えるようにグラウンドに唾を吐きかけて無言のまま中指をたてた。


結局、美花のことは何も分からぬまま、三人はグラウンドをあとにした。


メイは祐希を家まで送ると、必ず、美花のことは自分が何とかする。と、約束した。


それからメイは美花に何度か電話をかけた。途中、サッカー部の一人にこの件に関する謝罪とある事件について知らせを受けたが、その後で、ようやく美花と電話がつながった。
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