極悪プリンスの恋愛事情
1歩、また1歩と中庭に近づいて「あ、」と声が漏れた。
……やっぱりいた。
茂みから投げ出された足は私にとって見慣れた光景になっている。
なんかもう、靴だけで凛くんだってわかりそう。
そんなくだらないことを考えながらゆっくりと息を吐いた。
ポケットに入れていたスマホを鏡代わりにして、乱れた髪の毛を整える。
よしっ。
にこりと笑顔を作ってから彼に近づいた。
「凛くん、起きてる?」
茂みからひょっこりと顔を出す。
寒さなんて関係ないと言わんばかりの無防備な格好。
それでも風邪すらひかないから、凛くんは寒さに強いのかもしれない。
「凛くーん。相崎くーん。もしもーし」
けれど何度呼んでも返事はくれなくて。
わざとらしく反対側に寝返りを打たれた。
もう!起きてるじゃん!