極悪プリンスの恋愛事情
「………お前、なんで話しかけてくんの」
「えっ」
「迷惑なんだけど」
けれど、彼が私の気持ちを汲み取ってくれるわけがない。
あっという間に突き放されて、凛くんの言葉で空気が凍りついた。
私だけじゃなく、ファンの子たちでさえ動けなくなるほど暗い時間が流れている。
どうしよう……。
何か言わなきゃいけないのに、何を言ったらいいのかわからない。
かろうじて動いた右手で凛くんの袖に触れてみた。
だけど、
「触んな」
あっさり振り払われて何も残らない。
「最悪………」
最後にわざとらしく舌打ちをしてから廊下の奥へと歩いて行く。
引き止めることもできず、離れていく背中をただ見ていることしかできなかった。
「あーあ、教室戻ろーっと」
「なんか今日はいつにも増して機嫌悪かったね」
凛くんがいなくなったことで、集まっていたファンの子たちも散り散りになっていく。
動けないのはわたしだけ。
その場から一歩も離れることができなかった。