極悪プリンスの恋愛事情
っ………。
胃の中が気持ち悪くて吐き気がする。
私しか知らないのをわかった上で彼は“そう”答えた。
聞こえるように、見せつけるように、わざとこっちを見て。
どうしよう……泣きそう……。
私と交換したカーディガンを着るのがそんなに嫌なの?
関わるなって全身で言われてるみたいで苦しい。
このまま私を遠ざけて、何もなかった最初の頃に戻るつもりなんだ。
そう思ったら居ても立っても居られなかった。
「凛くん……!」
急いで席を離れてファンの子たちの中に飛び込む。
相変わらず周りの視線は怖いけど、気にしてられる余裕はない。
「あの、えっと…………おはよう!」
自分でも笑えるくらい酷く震えた声だった。
歪な笑顔を張り付けてなんとかいつも通りを装ってみる。
少しでも気を抜けば泣いてしまうと簡単に予想できた。
だから必死に、自分の心すら騙すための笑顔だった。