極悪プリンスの恋愛事情
「はぁ……はぁ……」
乱れた呼吸を整えながら保健室の前で息を飲む。
いなかったらどうしようとか、また拒絶されたらどうしようとか、嫌な考えが過ったけれど、すぐに頭を振って追い出した。
それでも心拍数は落ち着かないまま。
これは走ったせいだけじゃないと思う。
不安と緊張で震える手をゆっくりと伸ばす。
どうか凛くんに会えますようにと祈りながら保健室のドアを開けた。
「……………」
静まり返った室内。皐月の言う通り、誰もいない。
誰もいない、けれど…………。
奥に並ぶ2つのベッドのうち1つだけカーテンが閉まっている。
全く知らない人だったらとりあえず謝ろうとだけ考えて、その場の勢いで容赦なくカーテンを開けた。
「あ、」
視界に映った“彼”の姿を見て小さく声が漏れる。
帰ってなかったんだ………。
知らない人じゃなくてよかったと安堵してベッドに近づいた。