極悪プリンスの恋愛事情
「凛くん」
小さく名前を呼ぶ。
返事は………ない。
熟睡してるのかな。
そう思い、さらに距離を詰めた。
グッと顔を近づけて無防備な凛くんの顔を覗き込む。
……なんだか、初めて喋った頃に戻ったみたい。
中庭で寝ているのを見つけて、こんな風に近づいたんだっけ。
ベッドの上で気持ちよさそうに眠る姿がとても憎らしいのに、今でもドキドキしてしまう。
「─────私のことが好きって、ほんと?」
意識がないのをわかった上で問いかけた。
岸本くんは“そう”言ってくれたけど、完全に信じたわけじゃない。
期待していた時期があれど、面と向かって嫌いだと泣かれたら不安に決まってる。
諦めがつかないのは今でも凛くんが大好きだから。
ただ、それだけなの。
過去のトラウマをリセットできたら私と真剣に向き合ってくれるのかな。
叶えたい未来が脳裏に浮かんだ。