極悪プリンスの恋愛事情
「つーか、気安く名前で呼ぶな」
「えー、いいじゃん別に。ダメって言われても呼ぶから」
「最悪。こんなことになるなら、花野井にカーディガン渡すんじゃなかった…………」
ふいっと視線を逸らして深いため息を吐かれる。
その姿を見れば、私のことが本当に嫌いなんだとよく伝わってきた。
前途多難ってまさにこの状況をいうのかも。
無関心より全然マシだが、途方に暮れそうな予感しかしない。
それでも、この恋を始めると決めたのは私だ。
やれることは全部出し切ろう。一生懸命に悔いのない恋がしたい。
他でもない、目の前の君と。
「ねぇ、凛くん」
性懲りも無く再び名前を呼んでみる。
「なんだよ」と嫌な声を出されたけど、ちゃんと返事をしてくれるから、やっぱり優しいんだと思う。
「絶対振り向かせるから、覚悟しててよね!」
嫌いから始まる片想い。
前途多難で無謀すぎる恋だけど、絶対に諦めたりしないと、自信満々に笑ってやった。