お見合い結婚狂騒曲
ソファに座った葛城圭介が、ソーサーに乗った二粒のチョコを怪訝に見る。

「頂き物のチョコです。お疲れのようなので」

アンドロイドの顔が僅かに動く。

「ーー気遣いありがとう」

「いえ」と言って踵を返そうとすると、「ちょっと座って」とアンドロイドが向かいの席を顎で指す。

意図を計り知れず、突っ立っていると、さっきよりもキツイ声で、「二度言わせないでくれ、座れ」と命令される。

何だって言うんだ、本当に解せない人だ。
渋々腰を下ろすと、彼はヨシというように小さく頷き、コーヒーを一口啜り、チョコを口に入れる。

二人の間に、しばし沈黙が流れる。
居た堪れない。

「今日中に連絡があると思うが」

突然、葛城圭介が話し出す。
何の連絡、と一瞬考え、嗚呼、見合いの返事か、と思い至る。

どうせ、お断りしますだろう、もしや、わざわざそれを言いに来たのか。

「ーー次の段階、仮交際に進むことにした」

ほらみろ……ん? 今、何て?

「ハァァ! 今、仮交際って言いました?」
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