お見合い結婚狂騒曲
白い世界に見事マッチングした彼の姿は、一枚の絵のように美しく、声を張り上げる様はドラマの一場面のようだ。

だが、その先に視線を向けた途端、目が点になる。あれは重機? トラック? が十数台見える。雪を積んでいるように見えるが……。

「おお、圭介。よく来た。で、そちらのお嬢さんが結婚相手かな」

作業に気を取られていて気付かなかった。
斜め後ろから突然声が聞こえ、ヒッと驚き飛び跳ねる。

「白兎みたいな子だ」

視線を声の方に向けると、百六十三センチの私とそれ程変わらない、血色のいい小柄な老人が立っていた。

「お嬢さん、初めまして、圭介の祖父、葛城圭吾です」

葛城圭介と違い、人当たりの良さそうな柔和な顔だが、一瞬見えた鋭い眼光に、この人も只者ではない、と気を引き締める。

「赤尾真央です。圭介君と……」と言ったところで、エッとお祖父さんが目を見開く。その反応に言葉が止まる。

「ビックリでしょう? 祖母様の声にソックリで」
「ーー驚いた。桜が戻ってきたと思った」

パチパチと瞬きを繰り返しながら、お祖父さんがジッと私を見つめる。

「これで納得して頂けましたね。彼女……真央と結婚を前提に付き合っています。あちらはキッパリお断り下さい」

あちらとは、瑠璃さんのことだろう。

「了解した。今後のことは北海道から帰ってからだ。彼女とゆっくり話がしたい。では、その時まで御機嫌よう」
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