お見合い結婚狂騒曲
「良いお相手は見つかりましたか?」

放っておいてくれ、とキレそうになるが、そこは大人。丁重に返事をする。

「いいえ、こういうものはご縁ですから」

焦っておりません、をアピールする。

「あまり選り好みをされていると、良い結果を得られませんよ」
「妥協しろと仰せですか!」
「いいえ。自分を知り、周りを見た方がいいですよ、と忠告しているのです」

この男はいつもこうだ。正論を相手の気持ちを無視して押し付けてくる。

「人のことより、ご自分はどうなんですか!」

自分だって独身のクセに、と言いそうになる。

「僕は大丈夫です」

何が大丈夫なんだ! 男だから? ああ、こういう人種は、許嫁と言われる人が幼少より決められているのが相場だったな、とバイブルと言える恋愛小説を思い出し、自己解決する。

「とにかく、選り好みもほどほどに。では、楽しい週末を」

言いたいことだけ言い、軽く手を挙げ、駐車場に向かって歩き出す。
その背に向かって、イーダと歯を剥き出す。

本当、ムカつく!
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