君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

どうも、恋を叶える剣道小町、なんて呼ばれ有名になってきたらしく、そのおかげか手紙の受け取りを断られることがなくなった。

あたしが持ってきたら、受け取らなきゃいけない、みたいな気持ちにでもなるんだろうか。


でもいまのところ、最初の頃みたいに迷惑そうな顔はされてない。

どちらかというと、喜ばれたり、期待されたり、ワクワクされてたりしていると思う。


そういう相手の反応を落ち着いて見られるようになって、良かったなあと自分でもしみじみ感じていた。

深月に言われなかったらきっと、あたしはまだ雑に用事をこなすのを繰り返してただろう。

それだとこういう、嬉しそうな顔は見られなかったわけだ。


花が綻ぶような笑顔を見せてくれる人もいれば、照れくさそうに耳を赤くして俯く人もいれば、驚きに目を見開いて涙を流す人もいる。

そういう人たちの反応を見てると、悪くないのかもしれないなと、自然と思えてくる自分がいた。


恋をするのって、そんなに悪いことじゃないのかもって。

誰かを特別好きになる気持ちとか、恋したいなって気持ちにはならないけど、そう嫌悪したり、敵視したりするようなものじゃないのかも。そんな風に考えるようになった。

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