君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
だからいまは、そんなに嫌じゃない。こうして手紙を届けること。
誰かの幸せそうな顔を見るのは、わりと好きだ。
イヤイヤ始めたことだけど、いまは良かったのかもって思ってる。
それに、もったいないなともちょっと思う。
こんな風に、手紙をもらった人がする一瞬の特別な表情を、手紙を書いた本人が見られないことが、もったいないって。
あたしだけがこうして見てるのが、申し訳なくなってくるくらい。それくらい、皆いい顔をしてるから。
この柔らかで、温かで、くすぐったげな顔を、いちばん見るべき人がこの場にいない。
それが本当にもったいない。もどかしい。そして少しだけ、悲しい。
手紙を届け終えたあと、かすかに生まれる罪悪感。
それを抱きしめるようにして、あたしはまた手紙を届けに走っている。
そうしろと、誰かに言われているような、迫られているような気さえしていた。
今日最後の手紙を届け終えて教室に戻ると、後ろの方で深月と樹里がふたり立っていた。
珍しい組み合せだけど、不思議と一枚絵みたいに見える。ふたりともすらりと背が高く、艶のある黒髪で、クールな印象の美形だからかな。