君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「いま何時だと思ってんの? お昼間まで我慢しなさいよ」


言われて壁の時計に目をやれば、針は10時半を過ぎたところだった。

昼までまだ1時間半もある。そんなに長い時間この空腹に耐えろって言うの? 実の母はあたしにとことん冷たい。


「お腹すいたー。なんか軽く摘まめるものないの?」


冷蔵庫を開けて牛乳パックを手に取ったついでに、中を確認する。

いつもよりタッパーが随分多い。フタを開けるとお惣菜がギュッと詰め込まれていた。

煮物と、ポテトサラダもある。視覚からの刺激に、腹の虫がキュウと鳴った。


「お母さーん。これ食べていい?」

「どれ? ああ、ダメ」

「何で!?」

「それは優一郎くんのとこに持ってくやつだから。盗み食いしないでよ」

「なんだ、優ちゃんにかぁ……」


優ちゃんの両親が転勤で家を出てから、お母さんは時々優ちゃんに差し入れをしている。

白木のおばさんと仲良くて、優ちゃんのことを頼まれたのもあるだろうけど、単純に優ちゃんのことを気に入っているんだ。


そりゃあかっこよくて優しくて落ち着いていて頭もいい優ちゃんみたいな男の子を、気に入らないって方がおかしい。

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