君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「コイツ、鈴木の顔知らないっつーから」


おい、そこまで明け透けに言うか!

肘で深月の脇腹を突いてやったけど、奴はしれっとそっぽを向いた。


「あー。僕地味だからね」

「いや、そうじゃないよ! あたし他のクラスの男子ってほとんど顔と名前一致しないんだ。鈴木くんだけってわけじゃないから」

「いいよいいよ、気にしてないから」


地味って言われなれてるしねと鈴木くんは言うけど、決して自分を卑下してるわけじゃなく、朗らかに笑っている。

あたしの鈴木くんへの好感度は上がっていく一方だ。


「でも、鈴木くんのことを地味じゃないって思ってる子はいるよ」


バッグに残る2通のうち、花柄の手紙を取り差し出した。

一重の小さな瞳を丸くして、鈴木くんはそれを凝視する。


「鈴木くんに、ラブレターのお届けものです」

「俺に……? いったい誰から」


こわごわ、といった感じであたしから手紙を受けとる鈴木くん。

「本当に僕で合ってる?」と疑わしげなのがおかしかった。いいなあ、鈴木くん。癒される。

< 94 / 333 >

この作品をシェア

pagetop