君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「ちがうの? 剣道小町が俺に声をかけてくるなんて、それくらいしか思いつかなくて」
「ああ……」
そのあだ名、運動部だけじゃなく帰宅部にまで広がってるんだ。
ある意味褒め言葉な分、喜んでいいんだか怒っていいんだか、ちょっと複雑な気持ちになる。
「あれ。でも剣道部って人数足りてるよね? それに俺、経験者でもなんでもないし、運動もあんまり得意じゃないんだけど」
「ちがうちがう。勧誘じゃないから安心して」
「そうなの? 良かった。俺みたいなの誘うくらい困ってるのかと思った」
柔らかい喋り方をすす男子だなと思った。男って感じがあまりしない。
かと言って女子っぽいってわけでもないし、不思議な人だ。警戒心がまるでわかない、とでも言えばいいのか。
喋っていてちょっとほっとする男子って、優ちゃん以外じゃはじめてだ。
「じゃあ、剣道部のふたりが揃って、僕に何の用?」
「用があんのはコイツだけ。俺は仲介役みたいなもん」
「仲介……?」