【短編】遠距離サンタの贈り物

つき合い始めてすぐ、彼は遠い北の地に飛んだ。転勤。勿論、別れ話も出たけど、そんなことは出来なかった。

1年目のクリスマス、もちろんデートは叶わなかった。年末年始には会えるからと我慢した。

2年目、クリスマスにプレゼントが欲しいと駄々をこねる私の自宅に宅配便が届いた。

3年目、サンタさんが来なくちゃイヤ、と嘘泣きしたら、サンタの仮装をした彼の会社の友達がプレゼントを届けてくれた。

4年目の今年、私は彼に言葉を掛けることすらやめた。




自分の誕生日はあきらめる。でも彼の誕生日とクリスマスの夜には彼が欲しい。

クリスマスは全国共通。この男は私のものだ!って知らしめる機会なのだ。だってこれだけ離れてたら、二股掛けられたって分からないもん……。


仕事を終えて帰宅してひと息つくと携帯が鳴った。通話の着信だ。画面を見て思わず貌がほころぶ。


「あ、もしもし」
「おう。もしもし」


年末から年度末に掛けて忙しい彼から、珍しく電話が来た。いつもはメールのくせに。

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