星の降る夜、僕は君に嘘をつく。
椿Side

「それ私にやらせてくれますか?」

心春がそう言ったときには流石に心春にもムリだと思った。

この曲は高校生女子全員で踊る。
しかも毎年、フォーメーションを練り、一人欠けると完成しないもの。

これを楽しみにしている卒業生の先輩方がたくさんいる。
だから絶対にはずせない。

けれどこの曲は高校生にならないと習うことはない。
よって、誰にも頼めない。

中学生で一番は心春だ。
可能性が0よりも1%でもある方がいい。


結局、心春は完璧にこなした。
全く練習をしてない、教えてもない。
けれど完璧なんだ。
私が何度も練習したものも代役も完璧。

私は彼女の成長を喜ぶ気持ちもある。
けれど、素直に悔しい気持ちもある。

私って何なんだろう?
今まで頑張ってきたのも何なんだろう?

私は大きな喪失感に見舞われた。
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